僕は君と、本の世界で恋をした。

「とりあえず、まずは集客方法について考えてみない?」

私と目を合わせたあと、声のトーンを少し上げてから、菜穂はそう切り出した。

「本で客を引き込む方法ねぇ」

「要は普段、本を読まない人でも、遊びに来たいと思わせるスペース作りだよね」

菜穂の提案に他の二人が集客方法について話し出す。

いろいろな意見が交わされながらも、思うような答えは出てこない。

一人が「本のイベントなんだし、やっぱり本に興味ある人しか来てくれないんじゃない?」と言い出したところで、会話は一度、途切れてしまった。

うーんと各自で唸り、部室の中は静かになる。

そこで菜穂が小さくため息をついて、ふたりを見る。
彼女たちから提案が出ないことを確認したあと、今度は私に目を向けた。

「文乃は、どう思う?」

ギクリとする。

菜穂の目がいつになく真剣で、私の心の奥底を覗いているようだった。
私なら何か答えを持っているのではないかという期待も感じる。

三人の視線が一気に私に向く。

菜穂は友人だけど、ふたりには今日はじめて会ったから正直どうしていいかわからない。

そのふたりは自分がまったく会話に入ろうとしなかったからか、私に対してあまり良い印象を持っていないようだった。

向けられた視線も、あまり気持ちの良いものではない。

何か発言しなくてはいけない雰囲気なので、しぶしぶ口を開く。