僕は君と、本の世界で恋をした。

八月末に、大学では地域交流イベントが開催される。
そのイベントは学生や地域の人が参加できるフリーマーケットやワークショップのほかに、小さいサークル活動の発表の場にもなっていた。

「どうしたら、本のイベントに人が集まるんだろう?」

「そもそも本に興味ない人は来てくれないんじゃないの?」

「それじゃあ、意味がないよ。本に興味がない人にも来てもらいたいんだから」

五畳ほどしかない狭いサークル室では、小説を積んだ棚が両壁に設置されていた。
その間には六人掛けのテーブルチェア。
手狭な空間に菜穂と私を含めて、四人の女性が集まっていた。

イベントに向け、菜穂たちは熱心に話し合っている。

無理やり連れてこられた私は、最初に自己紹介をさせられてからは静かにテーブルの端に座り、他三人の話を聞いていた。

「だけど実際、本を読まない人ってどれくらい居るんだろうね」

「本の括りをどうするかでも全然違うよ。雑誌や漫画は読む人だっているんだから」

「今回のイベントで目指すところはどこ? 漫画も雑誌も、本としてカウントするの?」

「いや、それは無し。このサークルで活動するならやっぱり小説を読んでほしい。まずは手に取ってもらうというところまでは目標にしたいよね」

彼女たちの会話を聞きながら、私はなんとなくイベントの様子を思い浮かべていた。

本の楽しさを知り、本に夢中になっていく人たちの笑顔が自分と重なる。

けれど思い浮かんだことを打ち消すようにぱっと顔を上げたら、菜穂と目が合った。

菜穂が肩をすくめながら小さく笑う。