僕は君と、本の世界で恋をした。


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彼女と出会ってから、僕は図書館で過ごすことが多くなった。最初は戸惑いながら僕に接してくれていた彼女も、何度か話しかけるうちに逆に声をかけてくれるようになった。
だけど僕が彼女について知り得たことは、名前と学年だけ。
彼女のことをもっと知りたい。僕は彼女を図書館の外に連れ出したくなっていた。

「本が読めるカフェですか?」
彼女をなんとか連れ出したくて、提案した場所。それは本がたくさんあって、この図書館のように静かな場所。
「きっと気に入ると思うんだけど」
本を読んでいるとき以外はそんなに表情を出さない彼女。けれどそのときは少し目を輝かせているように見えた。
「置かれている本もセンスが良いよ。それに読書好きな人が薦める本なんかも置かれていたりするんだ」
それでも彼女はまだ迷っているように見えた。僕は彼女が手に持っていた本をすっと取り上げると、それをヒラヒラと振ってみせる。
「きっとこの場所で本を読む以上に君のためになると思う。騙されたと思って、僕に従ってみない?」
そう言って僕は、少し緊張しながら彼女に手を差し出した――。

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