おじさんは困ったように眉を顰めると、えっと、と口籠った。かける言葉が見つからないと言った感じだ。無理もない。だって白昼堂々、平日に突然アルバイトの彼女が押しかけたんじゃ、店長さんだってどうしたらいいかいいかわからない。

 頰を掻いた店長さんが一歩踏み込んで、言葉を発する前にあっと、声を上げて先手を打った。


「日野を探してます」

「えっ?」

「どこにいますかね」

「…」

「見つけて殴ってやりたいんですけど」

「…」


 私の言葉に、店長さんは目をまるくして、言葉を探すように目をあちこちに散らして、それきり何も言わなかった。

 おじさん改め、無駄にハゲ散らかったろくすっぽ役にも立たない新聞配達屋である。

 善良な市民の人助けをするのはいつなんどきも警察ばかりではないと、証明してくれる人間が一人でもいていいんじゃなかろうか?

 これ以上問い詰めても無駄だと割り切った私はそれ以上追求せずにぺこりと頭を下げて、相変わらず真冬の平日を剥き出しの生足という制服姿で。今一度旅に出ることとする。

 何かを探すようにふらふらと歩く。いや彼氏を見つけたいだけである。
 それがこんなに骨が折れることだとは。


(日野のばかやろうめ)


 どこ行ったんだよ、あいつ。







 横断歩道の赤信号をぼんやりと見上げて、私は踵を返して逆方向に歩き出す。