「おまわりさんは自分の子どもが突然姿を消しても、のん気に出勤するんですか」

「それとこれとは話が別でしょう」

「同じだよ、立場が自分か他人かそんだけだ。いいからさっさと探してよ」

「探すにも君の素性が知れないことには何一つ始まらない」

「足立多香、南中高校二年三組17歳」

「いやめちゃくちゃ高校生じゃんか」


 学校はどうしたの、と職質をかけられかけておっとと慌てて後ずさる。その際通りかかった杖をついたおばあちゃんに危うくぶつかりそうになったから、すみません、と手を貸して謝るといいのよ、と笑われた。

 
「今、学校の時間でしょ。昼間っから授業サボって何言ってんだか、学校に連絡してあげるからちょっと来なさい」

「話になんないもういいわ」

「あ、こら君、待ちなさい!」


 学校に行きなさい、と叫ぶこのおじさんにそれ以外のボキャブラリーはないらしい。

 困ったとき、頼りになるのはいつ何時も警察だと思っていた。そのデータを即座に塗り替えて落ち着くところは「税金泥棒」、偏見かもしれないけれど結局これみたいだから、声が近付く前に足早に駐在所を走り去る。


(探さなきゃ)


 冬、よく晴れたど平日。

 学生鞄の持ち手を握りしめた私は、ひとまず彼氏とよく共に歩いた道筋を辿ってみる事にする。


 ❄︎


 私と彼は、つうといえばかあみたいな、
 星が惹かれ合うような、
 出逢うべくして出逢ったみたいな、そういう間柄だった。

 すべての始まりにおいて、きっと深い意味なんてないのだ。
 というか単純に意味のあるものの方が少ない。何事も。


 意味や価値はまずもって後から付いてくる。

 というのは私の彼氏こと日野颯太の迷言だ。