(ハクジョー者め)






 結局最後の最後まで彼氏のおれに懐きもしなかった。余力を振り絞って笑ってみせる。もう無理だ。

 腹部から広がった傷は自力で耐えるのには限界を越えて、おれはいよいよその場に倒れ込んだ。
 死がそこまで迫って来ているのに、不思議と心は穏やかだった。母さんを恨んでもいなかった。こういう運命だったんだ。冷たいコンクリートが心地良い。死ぬのは怖くない。だってずっと一人だった。でも正直言うとさ。

 もう少し生きていたかったよ。









「多香…」