「遅えよ多香。探したぞ」
火葬場の門からおぼつかない足取りで現れた私に、てっさんはムッとした表情で告げた。
常日頃タンクトップやTシャツの軽装備も、今年最強の大寒波を前にして、珍しく黒のダウンを着ていた。その下は白いシャツを着ていて、いつも伸びきった服をまとっているくせに、心底似合わないと思った。
伸びっぱなしのロン毛を括っていた彼はヘアゴムを取り、煙草に火をつけるとそれを口に咥える。
「辛いんなら泣き言の一つ吐いて良いんだぞ」
「…」
「俺も理解するのに相当時間かかったし。何より献身的に支えてたあいつが一番、なんでって思ってはいただろう」
「…」
「いやしかし」
「鬱病の母親に腹刺されてぽっくり、とはね。
生みの親に殺されるってのはさぁ、どんな気分なんだろうな」