(しかもロン毛だぞ神だ)


「冷やかしならよそいってやれ、つーか颯太お前は前修理してやったチャリのチューブ代払え」

「ツケといてっつったじゃんそんな簡単に男子高校生が金稼げると思うなよ」

「思うなよ」

「多香エコーすんな。っつーかお前のチャリはあれ壊れすぎだ前にもチェーン外れてたろ、いい加減新しいのに買い替えろって。修理費の方が高くついてんぞ」

「さて多香さん僕らは公園にでも行きますか」

「ラジャーっすばいばいきーん」

「死ねバカップル側溝に落ちて死ね」


 ❄︎


 時折ホイッスル駐在員という追っ手の姿がないかを振り返ったりしていたけれど、こっちが過剰に心配するほどもう他人は私たちにも関心がないらしく、結局成り行き任せで町内のだだっ広い公園に辿り着いた。

 公園と言うよりかは広場に等しい。遊具の一切ないそこは夏休みになれば空町住民が朝ここへ来てラジオ体操に勤しむし、朝方の散歩やランニングに人はこの公園をよく使って、前にホームレスのハーモニカをよく吹いている爺さん・通称ハーモニカ爺さんに飴をもらったことがあったが、日野には今時何があるかわかんないんだから簡単に近寄んなとドヤされたこともあったっけ。


(て、なんで過去形?)





 ざり、と砂の音がして振り向くと、飲みものを買ってきた日野が、萌え袖した両手にココアとコンポタをぶら下げていた。

「どーっちだ」

「………ココア」

「ん」

「と見せかけてコンポタ」

「どっちやねん」

 普通ここで王道の女子はココア選ぶやろ、とエセ関西弁で告げる日野の口ぶりは極々自然だった。そういやこいつ小学校までは関西にいたんだっけ、と飲み込んで、

 手を合わせると「いただきます」とコンポタ缶のプルタブに手をかけた。が、開かない。つい最近爪切ったばっかなんだよ、と猫が扉を開けたいときみたいにカリカリカリカリしていたら、横から缶を掠め取った日野がぷしゅ、と缶を開けて私に手渡してくれた。


「世話が焼ける」

「イケメン」

「知ってる」

「黙って」