ラーメン屋「虎飯」を出て、二人揃って爪楊枝で歯をしーはーしていたらサラリーマンのおじちゃんに怪訝な目で見られた。

 ああ確かにね。白昼堂々、それも平日のこんな時間に高校生二人が学校揃ってしーはーしてたらちょっと補導案件だわな。
 やむなくぽきん、と爪楊枝を折って吸い殻入れに入れる。日野はいつのまにか既に爪楊枝を捨てたのかもう涼しい顔で見ていたので、にへ、と笑ってみせた。


「おしゃ。腹ごなし済んだことだしー、どこいくなにする」

「ゆめ屋は?」

「日野が遅いからおひとりさましちゃったっつーの」

「マジかよ」

「はいはい!」

「はい足立さん」

「死体ごっこ」

「小学生かお前は」

「道路に寝転んで死ななかったら勝ち」

「ガチで轢かれたらどうすんだよ」

「日野とか殺されても死ななそう」

「いや殺されたら死ぬわ」

「じゃあなんか他に案あるんですかー」

「んー。じゃ、冬に花火とかどーすか」

「イカすー!」

「あ、やべ…一度こうなったら聞かないんだよな多香は」

「だってロマンチック!やりたいやりたい超やりたい!」


 ぴょんこぴょんこ、と跳ねんばかりの勢いで前のめって挙手をしたら、はいはいって宥められた。でもそこで一抹の不安が過ぎる。


「あ、もしや花火…今冬だから売ってない」

「です」

「んだよー期待させといて落とすなんてあんまりだ」

「どこ行ったって手に入らんだろうな。“普通”は」

「“普通”は?」


 がっくりと肩を落とした私が振り向いて首を傾げると、日野はふふんと微笑んだ。


 ❄︎


「っひょ─────!すっげー!」


 通学路の途中、川沿いの土手で手持ち花火に火を点けると勢い良く光が飛び散った。こういうのは普通夏の夜にやるもので、冬の昼にやるものでは到底ないだけにミスマッチが過ぎるけど。
 乾いた空気を火花が虫のように迸って、わあいっと勢いよく振り回す。


「惚れ直した?」

「今惚れた!」

「いやおっっっそ」


 しょっちゅうする定番化したやりとりに、顔を見合わせて笑い合う。

 “普通”ならどこに行ったって手に入らない花火は、日野のアルバイト先・新聞屋「まごころ」のロッカーで眠っていたものだ。夏場に店長から譲り受けたものをすっかり忘れてロッカーに入れていたそうなのだけど、幸いそれが未開封のままで置いてあったこと、また新聞屋という紙に包囲された乾燥地区に置かれることで幸運にも湿気の侵入を防ぎ、今こうして季節外れの花火を出来るに至ったのではないか、と言うのが日野の見解。

 私からすると私のことを門前払いしたハゲ店長にもう一度会うのは嫌だったけど、お店に人がいなかったのが続く三つ目のラッキーだ。