無人のリビングに、テレビからの話し声が響く。

 釣りの番組、健康サプリの宣伝とめまぐるしくチャンネルを切り替えて朝のニュースに辿り着く。でも空気の澄んだ朝とは裏腹に物騒な事件・事故の数々が煌々と私の瞳を照らすから、古びたおんぼろアパートが映し出されてすぐにぱちりとテレビの電源を落とした。




【早番のひとと交代したのでもう出ます
 朝ごはんは冷蔵庫のものあっためて食べてね

                     母】




 電子レンジから温めたホットミルクのマグに口付けて、母の書き置きをテーブルの端にやる。

 テーブルに置かれた物の数々を腕でぐいーっと押し退けると、何とかスペースを確保して腰掛ける。向こうでハガキか手紙が落ちた気がするが気にしない。



 早朝。マンションの一室から見える外の景色一面を、はじまりを告げる太陽が薄明るく照らし始めた。

 リビングは雑然としていて、ところどころでは脱ぎっぱなしの衣服や年の離れた弟のランドセルが廊下の側で寂しげに転がっている。

 私は食卓でひとり、制服から覗く冷えた足先をふくらはぎになすりつけながら冷めたパンに齧り付く。