「そっか。
琢哉は私の中で……ううん。
私は琢哉に、生かしてもらってるんだ」

「……俺たちを恨んでいるだろうな、おまえも、琢哉さんも。
でも、失いたくなかったんだ」

「ううん。
まったく恨んでないとは云えないけど」

確かに、こんな身体になってしまったうえに琢哉も失ってしまって、両親を恨んだこともあったけれど。

いまは……。



教会の鐘が鳴る。

父に車椅子を押され、進むバージンロードの先に待っているはずの人はいない。

注がれる、奇異の目と哀れみの視線。

でも、私はかまわない。

「病めるときも健やかなるときも、佐々木(ささき)琢哉を夫とし、ともに歩むことを誓いますか」

「はい」

私の隣で笑っている、琢哉に笑い返す。
琢哉の唇が僅かに動いて囁いた。

「ずっと一緒だよ」

そうだね、琢哉。
これからはずっと一緒だよ。
一緒に、生きていこう。



【終】