有秀を襲った男の家族は先のヒューマノイド暴走事件の被害者で、精神的肉体的後遺症が原因で亡くなったそうだ。
一人残された彼は高校卒業後、大学進学せず就職した。
本当は進学したかったのだが経済的なこと、親族の家を転々としたことで断念した。
色々あり気の毒にも思うが、それが他人を傷つけて良い理由になるはずもない。
「……ここでも、あの暴走事件が絡んでいるのね」
真吏はため息をつく。
自宅でパソコン画面を開き、新たな記事の起稿を始めた時だ。
スマートホンが鳴った。
志鳥からだった。
「マスター、こんばんは。有秀君はどうですか……え、もう退院できるんですか。良かったー!……はい。え?渕脇社長?」
真吏は志鳥の話を訊いている。