鷹人は女を追っていた。

女は体育館内の倉庫内へ踏み込む。
すると男の腕が伸びて女を陰に引っ張り込み、壁に押し付けた。
いわゆる壁ドンだ。

「強引な坊やね」
「嫌いじゃないだろう?」

鷹人にしては軟派な台詞だが、瞳は笑っていない。

「おまえだな。はぐれヒューマノイド」

ニュースでも流れていたヒューマノイドだ。
アルキメット・レアタイプのヒューマノイドのようである。世界にも数体しか製造されていないヒューマノイドが、街を歩くことなどあるのだろうか。
鍔広の帽子の下の瞳を覗き込む。
美しい顔立ちの女だった。
その顔に鷹人の瞳が動いた。

「慣れないことを、するものじゃないわ」

女は含み笑いをすると手を伸ばし青年の顔を撫でる。

「大きくなったわね」

その言葉は訊いたとたん、青年の躰は見えない鎖で捕らわれたかのように動かなくなった。

女は微笑する。

「可愛い坊やだけど、生きていられると困るの。わかってくれるわね」

頬に添えられた手が下へ移動し鷹人の首を締め上げる。
尋常ではない力だ。
だが鷹人は躰を動かせず無抵抗だった。