「有秀君は高校生よね」
制服はなく服装は自由で、髪型も特に決まりはない学校だという。
自由な校風だが社会的に相応しい行動と身なりをせよ、と一応、学校からの注意事項はある。
有秀がこの学校に進学を決めたのは、その点にあった。
「志鳥さん、ぼくにアイスキャラメルラテちょうだい」
秀道から有道に変わった有秀が、養父に違うドリンクをリクエストする。
「中学校までは大変だったよ。髪の色も瞳の
色も生まれつきなのに、黒に染めろとかさ。瞳の色なんて、直せないよ」
それが認められる学校を探したが見つからず、髪を染める事が禁止されているはずの学校で髪を黒く染めて登校し、瞳の色を誤魔化すために眼鏡を着用し中学校時代を過ごした。
「依頼で最初に会った時、制服着てたけど……あれは違うの?」
「あれは高校制服コスプレ。せっかくの高校生だから、着てみたいと思って」
同級生の間でも制服を着用してその気分を楽しむ、というのが流行っているらしい。
そのように今の高校に進学してからはモラルを守れば何もかもが自由であり、生徒もアクセサリーを身につけていたり髪の色が違っても指摘されることはない。
「有秀君の通っているその学校、確か全国的に学力トップなのよね?優秀だわ」
真吏はコーヒーカップに口を付ける。
清白が淹れた珈琲は美味しい。
「脳がふたつだからじゃないかな?覚える容量が大いんだよ、きっと」
真吏の言葉に有道は笑ったが、志鳥は保護者らしくこの少年の将来を心配している。
「あれだけ自由な校風だと卒業して社会に入った時、窮屈に感じるかもしれないな」
有道は出されたキャラメルラテをストローで、啜る。
「でも自由を満喫しちゃって満足して、社会では普通に溶けこんじゃうみたいだよ。先輩が云ってた」
今は有道な有秀がキャラメルラテを、あっという間に飲み干し、おかわりを催促する。
志鳥は呆れながらそれを用意する
「それだといいがな。それとおまえが通学路に使ってる道。通り魔が出たそうじゃないか。拳銃を持っている上に、まだ捕まってないみたいだし、気をつけろよ」
「わかった。じゃあアキラルに依頼だね。家族割り引きでやってもらおうかな」
有秀が再び笑う。
「今度、学校の文化祭があるんだよ。今年で最後だし、中止なんてなって欲しくないんだけどなあ」
残念そうにしている少年に、真吏は訊ねる。
「何の出し物するの?」