「暇なんだな。ヒューマノイドを使えば家事全般は百パーセント、やってもらえる。人間様が労働するなんて考えられんな」
「うるさいわね、運動にもなるし脳の活性化にもなるのよ、家事は!」

真吏はムキになって言い返した。

「その通りだ」

鷹人が口を挟んだ。

「筋力が落ちる。動くことは大切だ」
「ほらほら、大人は自分で自分のことはするのよ」

そらみたことか、と真吏が勝ち誇る。

「でも運動したからといって、鷹人のようになれるわけがないだろ」

鷹人の運動能力は産まれつきのようだ。
身のこなしといい、あの格闘術といい、練習したから道場に通ったからといって身に付くものではないように真吏には思える。

「それはさておき。少なくともおれはお姉さんよりはオトナだから、譲ってやるよ」
「また減らず口を」

真吏が怒りのメーターがマックスになりかけた時、少年の表情と雰囲気が変わる。
首を傾げる。

「ヒドが寝ちゃった」
「アル君!会いたかったー!」

真吏は抱きついた。
先ほどまでの剣幕が嘘のようだ。

「私の今の癒しは、アル君だけ。今日も可愛いわ」

出会った頃はうざったく苦手に感じていた有道の事が、今は可愛いくて溺愛に変わっている。
作業を終えた青年が二階の自室へ戻る背中に、有秀が声をかける。

「鷹人、夕御飯はビーフシチューが食べたいよ。作ってね」
「時間がかかるぞ」
「なるべく早く作って」
「鷹人君、普通の料理も得意なの?」

真吏が何となくショックを受けている。
それを瞳の端で微笑すると、階段を登っていく。