しかし。死というものはどういうものだろうか。終わりだというのはわかっているけど、それは痛くて苦しいものなのか。


ーー雨が。雨の音が、そう思わせるのだろうか。


少年は耳を傾けながら考える。堂々巡りだとわかっていても。

きっと思い出せれば、すべて解決するはずだ。霧が晴れていくように。


灰色の空で覆われた薄暗い街中を街灯が照らしている。雨のせいか皆足早に通り過ぎて行く。少女が可愛らしいパステルカラーの店を指差しながら微笑む。


「あそこのお店クレープがおいしいんだよ。ユーリは甘いもの好き?」

「……甘いものか。嫌いでは、ないと思う」

「今度一緒に食べに行こうね。よく行くお店だから、いつもサービスしてくれるの」

「そうだな。楽しみにしてる」

「ユーリ笑ってる」


どうやら自然と笑っていたらしい。少女と交わした小さな約束。初めてだから、それが嬉しかったのだろうか。でも嬉しそうな少女を見ているとーーとても満ち足りた気持ちになる。



この気持ちは一体なんだろう。