クロテッドクリームを掬おうと手にしたスプーンを置いて、座り直す。
まっすぐに松岡くんの、レンズの奥の瞳を見つめた。
改まった私に松岡くんは珍しく緊張しているようで、ごくりとのど仏が動いた。

「……仕事部屋を掃除してほしいの」

「……は?」

あきらかに松岡くんは戸惑っている。

「その。
……もう一度、よろしいですか?」

「だから。
仕事部屋を掃除してほしいの」

一気に、松岡くんの緊張が解けた。

「そんなことでございますか」

松岡くんにしてみれば、改まってお願いするようなことでもないのだろうけど。
私にしてみれば深刻な問題なのだ。

「そんなことって簡単に言うけど。
これには深い事情があるんだよ」