でももう感じないし、きっと気のせいだったのだろう。

「お待たせいたしました」

いつも通り、私の前にアフタヌーンティのセットが並んでいく。
サンドイッチとスコーンに、今日はモンブラン。

「本日はアイスティにいたしました」

「どうして?」

すっと、ストローの刺さったグラスを差し出されて首を捻る。
もう十月に入り、普通はアイスティなんて出さないだろう。

「先ほど、汗をかいておいでのようでしたので」

意地悪く、右の口端が僅かに持ち上がる。
途端にかっと、顔が熱くなった。

「……うるさい」

行儀悪く、ストローを吹いてアイスティをぶくぶくとさせてしまう。

「まったく、マナーがなっていませんね」

莫迦にするように唇だけで薄く笑われ、胸がどきどきした。