「ううん、私に人を見る目がなかったから……」

心臓の鼓動が落ち着かない。
カップを口に運んで紅茶の香りを胸一杯に吸い込んだら、少しだけ冷静になれた。

「とにかく、この子が無事にここへ戻ってきただけよかったです」

「にゃー」

呼んだ? とばかりに黒猫がずぼっと松岡くんの腕の中にあたまを突っ込んできた。
戻ってきてから目一杯甘やかせてやったので、警戒は解けたらしい。

「それでね?
この子、うちで飼おうと思うんだけど……どうかな?」

「いいんですか?」

頑張って平静な顔を作っているのがわかるほど、松岡くんはそわそわしていた。
そういうのはなんか微笑ましい。

「うん。
でも私、生活リズムがめちゃくちゃでしょ?
だから、仕事で来たときだけでいいから、助けてくれると嬉しい」