見にきたときは即決だったし、可愛い可愛いととても気に入っているように見えた。
それに面談ではちゃんと世話をすると約束してくれたし。
あれは全部、口先だけの嘘だったんだろう。

「ごめんね、私が人を見る目がないばっかりに……」

情けなくて涙が出てくる。
こんなに怯えている黒猫にはいくら詫びても詫びたりない。
かろうじてよかったのは彼女が、この子を捨てずに返しにきてくれたことだ。

「もういっそ、うちの子になる?」

もらい手を募っても、また彼女のような人に渡してしまったらとか考えると怖い。
それに、一匹くらい残してもいいかとも考えていた。

「どうする?」

怖がらせないようにそーっと、猫のあたまを撫でる。

「にゃー」

あたまを上げて小さく鳴いた猫は、肯定しているように見えた。