「すぐにご準備いたしますね」

いつものように右の口端だけで松岡くんがにやりと笑い、顔がかっと熱くなった。


今日は茶の間でのお茶は不可能だから、ダイニングでいただく。

「あー、あー、あなたたちは。
元気がいいのはいいことですが、少しは控えるということを覚えてください」

まとわりつく猫たちに、執事モードで真剣に説教しているのがおかしい。

「次、こんなことをやったらおやつは抜きですよ。
……まあもっとも、次なんてないんですが」

ぼそっと呟いた松岡くんは淋しそうだった。
猫たちはもらい手がみつかり、明後日の日曜日にそれぞれ引き取られる。
松岡くんが猫と会えるのはこれが最後、というわけだ。

「毎日ほんと騒がしくて、面倒見るなんて言わなきゃよかったってちょっと後悔したけど。
いざいなくなるとなると、淋しいね」

短い間だけど猫たちとの生活はそれなりに楽しかったのだ。