「な、なんですか……?」

油の切れたロボットのようにぎくしゃくと松岡さんを振り返る。

「以前から気になっていたんですが、夕食の写真を撮ってどうなさるのですか?」

「ど、どうって……」

つい、視線を逸らして床を見てしまう。
そこにはなにもないのに。

「そ、そう!
小説の資料にするんですよ!
ときどき食事のシーンを書くときなんか、メニューとかそういうので困るので」

我ながらうまい言い訳だったと思う。

――ただし、心臓は早鐘のように鼓動していたし、脇の下にじっとり汗をかいていたが。

「さようでございますか」

興味がなさそうにそれだけ言い、松岡さんはまた洗い物をはじめた。