「はっきりそれが私だと、言えるのですか」

一歩、私の方へと松岡さんは距離を詰めた。
間近で冷たい銀縁眼鏡の奥から見下ろされると……怖い。

「そ、それは……」

情けないことに私の声は、か細く震えていた。

「……見間違いかもしれない、……です」

似ているようには見えた、が距離があってはっきり確認したわけじゃない。

「見間違えであなたは、私を責めるのですか」

「……はい。
……すみません。
……ごめんなさい」

俯くと涙がじわじわ滲んでくる。
さすがに泣くなんて情けないことはできなくて顔を上げたら、松岡さんと目があった。

「まるで私が泣かせたみたいじゃないですか」

そっと松岡さんの手が私の顔に触れ、目尻に僅かに溜まる涙を拭ってくる。