けれど行ってどうするのだろう?
そもそもなんで、隣家に用が?
考えても考えてもわからない。

「こんにちはー」

結論が出ないうちにガラガラと玄関が開き、松岡さんがやってきた。

「本日もよろしくお願いいたします」

「あの」

台所に向かおうとしていた松岡さんの足が止まる。

「なんでしょうか」

「その。
さっき、……隣の家に入っていきませんでしたか」

「どうしてそのようなことを?」

松岡さんはなんでもないように聞いてきた。
が、一瞬、驚いたように目が大きく見開かれたのを私は見逃さなかった。

「さっき、松岡さんらしき人が隣の家との間の道を歩いてるの、見ました」