一歩、足を踏み出したところで止まった。

……にゃぁ?

猫でも住み着いているんだろうか。
そうだとしたらもしかして、塀の上を歩く猫を人影と見間違えたのかもしれない。

「なーんだ」

幽霊も、正体見たり枯れ尾花、じゃないけど。
納得できる答えが得られて、一気に気持ちが軽くなった。



お昼に起きてシャワーを浴び、軽く身支度。
そのあとは松岡さんが来るまで少し仕事。
最近はこのリズムが整ってきて、起きるのが苦じゃなくなった。

考え事をしながら見ていた窓の外、また人影が横切っていく。

「だからあれは猫……じゃない」

一度は猫だと納得したそれは、確実に猫じゃなかった。
しかも、なんとなくよく知っている人に似ている。

「どうする?
行って確かめてみる?」