あれがもし、祐護さんの力で受賞していたらと思うと――ぞっとする。

あんな、幼稚な小説。
いま読み返すとわかる、いかにあれがダメな小説だったのか。
あれが受賞作となれば、炎上間違いなし、だ。

「また次、頑張るよ。
きっと前よりいいの書けるし。
……それよりも。
こっちが大事ー!」

ゆっくり、だけどTLノベルの仕事依頼も受けている。
だって――たくさんの、ファンレターをいただいたから。


あの事件のあと、私の本の売り上げは伸びた。
祐護さんの思惑通りだとなると、腹立たしいけど。

おかげでファンレターの中には嫌がらせの手紙もあったけど。
でも大多数は励ましの手紙だった。

頑張って、負けないで、作品を待っている。

「俺も、待ってるから」

さらに克成が後押ししてくれた。

だから私は、――またTLノベルを書いている。

いまはまだ、これでいいんだと思う。
無理して焦って、ほかのジャンルに手を出さなくても。
いまは待ってくれている読者のために小説を書く。

そしていつか。

――今度は、私と克成の物語を、書く。




【終】