否定しながらも目が泳ぐ。
空調が効いているのに変な汗をじっとりとかいていた。

「どっちにしろ、いい作品を書くためです!
がんがん彼を利用しましょう!」

「そ、そうですね……」

桃谷さんは陽気に笑っていられるが、私にとっては人事ではないのだ……。

駅からの道をほろ酔い加減で歩く。
コンビニに寄りデザートを買いかけて、やめた。
だって、圧倒的に松岡さんの作るスイーツの方がおいしいから。

「やっぱりやめとけばよかった……」

いまごろになってケーキスタンドの重さが腕にきた。
多少後悔しながら、隣家の前を通りかかる。
やはり門は固く閉ざされて売り家の看板がついているし、人の気配はない。

……やっぱり私の気のせい?
松岡さんが来るようになって、精神的にも疲れているしなー。

ケーキスタンドの入った紙袋を持ち直す。

――にゃぁ。