髪はさらさらと彼の手を離れていく。

私を見つめる、瞳が熱い。

「松岡……ううん、克成(かつなり)、くん」

心臓がとくん、とくんと甘く鼓動する。

その顔にそっと触れ、自分から唇を寄せる。
形のいい薄い唇に自分の唇を重ね、……離れた。

「……愛して、る」

身体中が発熱機にでもなったかのように熱を持つ。
顔の間近にストーブがあるかのごとく熱く、上げられない。

「……それって紅夏のファーストキス?」

「う、うん。
そう、だけど」

なんでこんなことを聞かれなきゃいけないのだろう。
こっちは精一杯の勇気を振り絞ったというのに。

なんだか悲しくなってきてじわじわと涙が出てくる。

「ああ、わるい!
泣かせるつもりはねーんだ。
ただ、……もしかして、立川のヤローにもう奪われていたらって思ったら……」