「ほんと、セバスチャンが元気になってよかったー」

私より一足先に退院したセバスチャンは、松岡くんが世話をしていてくれた。
それに合わせて、私の家へ引っ越ししたくらいだ。

セバスチャンの先導で家の中に入る。

「あ、サッシ、ガラス入れてくれたんだ」

あの日、松岡くんが割った掃き出し窓はすでに修理がしてあった。

「当たり前だろ。
どれだけたったと思ってるんだ」

「そう、だね」

入院は一ヶ月間続いた。
指は思いの外、重傷だったようだ。
いくつも仕事をキャンセルすることになり、大変申し訳ないことをした。


「もうっ!
大藤先生が謝ることじゃないんですから!」

お見舞いに来てくれた桃谷さんは、――なぜか、怒っていた。