「なーにが言いたいんだっ!?」

ぷにっと松岡くんが私の頬を摘まんでくる。
痛い、けど嬉しい。

「松岡くんを個人的に雇えないかなーって。
あ、そういう具合なのでお給料は出せません。
けど、家に……す、棲んでくれたら、家賃はいらない、ので」

私としては精一杯の、同棲のお誘いなんだけど……。
ダメ、かな。

はぁっ、俯いたあたまの上に、ため息が落ちてくる。
失敗したんだって泣きたくなった。

「なんで素直に、一緒にいたいって言えねーかな?」

おそるおそる顔を上げると、松岡くんはあきれたように笑っていた。

「一緒に、いたい。
もう松岡くんが帰るたびに淋しくなるのは、嫌」

「うん」

松岡くんの手がそっと、私の顔に触れる。
じっと眼鏡の奥から見つめられ、意味がわかって目を閉じる。