「はい」

椅子を引き寄せ、私の傍に横井さんは腰を下ろした。
その後ろに女性警官が控える。

「じゃあ、あの立川と作家先生の関係から……」

祐護さんに出会ってから、そしてこのひと月のことをすべて話した。

あんなに私のために尽くしてくれたあれが、演技だったなんていまでも信じられない。
が、彼にとってはただ単に、ベストセラーを生むためだけだったのだろう。

「ベストセラー、ですか」

「はい」

横井さんは信じられないようだが、祐護さんの狂気は出版界に携わる者としては少し理解できる。

いまの時代、書籍の売り上げは落ちる一方だ。
私だって重版がかかったとかなったら、飛び上がって喜ぶくらいだ。
それくらい、珍しい。
だからこそ、祐護さんはベストセラーに執着したのだろう。
けれど途中から、手段が目的になっていたようだが。