「……やっぱり立川が好きなのか」

なかなか返事をしない私に、松岡くんは淋しそうに目を逸らした。

「ちがっ、私はっ」

どんなに忘れようとしても無理だった。
松岡くんが犯人だって――ほんとは違ったけど、わかっていても松岡くんのことばかり考えていた。
上手に騙してわからないように殺してほしかったとさえ願っていた。

「私、はっ。
松岡くん、がっ。
……好き、だからっ」

動かせる左手で彼の服を掴む。
けれど顔は上げられない。
怖くて松岡くんの顔を見られないから。

「紅夏……」

そっと、松岡くんの手が私を上へ向かせる。
眼鏡の奥では泣きだしそうに歪んだ目が私を見ていた。

「あい……」