「許すも許さないもさ。
俺はあのあともずーっと紅夏が心配だったの。
意味、わかる?」

「だって私のせいで嫌がらせ犯だって疑いをかけられて、会社だってクビに……」

「なってない」

「はい?」

ごめん、意味、わかんない。

「上司からはめちゃくちゃ怒られたけどさ。
……それはちょっと、紅夏を恨んだけど。
でも疑いも晴れたし、ほかのお客様が庇ってくれたし。
ほら、俺、マダムキラーだし?」

くいっ、松岡くんが眼鏡を上げる。
いや、それ威張るところじゃないから。

「昨日、仕事の帰りだったからこの服。
ちなみにまだ、あれから家に帰れてない」

「うっ」

それは大変、失礼いたしました……。