よく考えたらそうなのだ。
それに冬場はコートを着ているから執事服なんてわからない。
祐護さんが見たと言っていた水曜日は、松岡くんは休みの日だから執事服じゃない。

「でさ、横井さんが言うんだ。
あの立川って男、ネット小説家殺人事件で捜査線上に浮かんできた男と特徴が似ている、って」

だからあの日、横井さんは妙に祐護さんを疑っていたんだ。

「だから帰るとき、いつも紅夏の家の前を通って帰ってた。
……心配、だったから」

ふぃっ、目を伏せた松岡くんが視線を逸らす。
心臓が一気にきゅーっとせつなくなった。
心配してくれていたのも、それが少し恥ずかしそうなのも。

「ありがとう、松岡くん。
こんな私を心配してくれて。
もう許してなんていえないはわかってる、けどっ……」

情けないことに声が鼻声になっていく。
慌てて鼻を啜ってごまかした。

「あーっ!」

なんかもどかしそうにまた、松岡くんはあたまを掻きだしたけど……どうかしたのかな。