セレブはなにかと狙われやすいから、いわれてみればこんな目立つ人間を傍に置くなんてできないだろう。

「ですがこの格好は私の憧れです。
ですのでいくつかお誘いはありましたが、お断りしました」

「はいっ!?」

いやいやいや、ちょっと待って。
セレブの執事を断って家政夫をやっているのってちょっと、理解できない。

「じゃ、じゃあ、執事カフェに勤めるとか……?」

あそこだったら制服が執事服だから、家政夫よりはいいんじゃないかな……?

「確かに、この服か着られるならと執事カフェで働いたこともございます。
が、エンターテイメントとしてお嬢様の給仕につくのは本来の執事の仕事から、大きくかけ離れております」

それには激しく同意だけれど、でもだからといって。

「家政夫だって違うんじゃないですか……?」

はぁっと小さく、莫迦にしたようなため息が松岡さんの口から落ちて、ムッとした。