動かないように固定されている右手薬指には感覚がない。

このまま動かなかったら?

そんなことを考えて不安になりそうになる。

「俺が、もっと早く駆けつけていたら……!」

松岡くんの顔が苦しそうに歪んでいく。
でも悪いのは彼じゃない、私だ。

「松岡くんが助けに来てくれたから、私は死なずにすんだよ。
ありがとう」

「でも、紅夏の指が……!」

「大げさだな。
指一本動かなくなったって、書けるって」
こんなに私の指を心配してくれるんなんて、胸がじーんと熱くなってくる。
松岡くんだってこれほど私の指を心配してくれるんだ。
やっぱり指を切り落とそうとした祐護さんは絶対、編集者なんかじゃない。
ただの殺人者だ。

「それでね。
……ごめん」