父はなにも言わない。
でも、かまわない。
私は自分の気持ちを、ちゃんと伝えたから。


「松岡くん。
セバスチャン、は」

両親は今日は帰ると病室を出ていった。
父は意気消沈していたし、そんな父にどうしていいのかわからないのか母はまだおろおろとしていたが。

執事服の男――松岡くんが、私の傍に寄ってくる。

「手術、無事に終わった。
命に別状はない、って」

「よかった……」

ほっとすると涙が出てくる。
私を庇ってセバスチャンが死んでいたらきっと、後悔してもしきれなかっただろう。

「紅夏の指、は……?」

「十中八九、くっつくって。
でも前のように使えるようになるにはかなりリハビリが必要だって」