母は私と父の間をおろおろとしている。

「うっ。
……そ、そんなの、読まなくたってわかる。
お前の書いているのは最低なエロ小説だ」

どこまでも認めようとしない父親が腹立たしい。

「あの、すみません」

「なんだ!」

睨み合いをしていたところへ声をかけられ、父が相手を怒鳴りつけた。

「き、君は……誰だ?」

が、振り向いた先には執事服の男が立っていて、完全に動揺している。
まあ、日常生活で執事服の男なんていないから、仕方ないとは思うけど。
いくら慣れている私でも、さすがに病院では浮いていると思うし。
「べ……彼女の小説を馬鹿にしないでくれますか。
俺は読んで、めちゃくちゃ面白かったんです。
こんな小説を書ける彼女を尊敬しています」

「どうせ君は、低俗なまんがやなんかばかり読んでいるんだろう?
そんな奴の意見なんて聞く気も起きん」