玄関でなにやらばたばたと音がする。
すぐに松岡くんが戻ってきて、警報器の電源を切った。

「遅くなって、ごめん」

口の中に詰まっていた布を出してくれた。
聞きたいことはたくさんある。
けれど。

「セバスチャン、セバスチャンが!」

「紅夏?」

足のロープをほどいてもらうのももどかしく、セバスチャンに駆け寄る。
セバスチャンは弱いながらもまだ呼吸をしていた。

「よかった、まだ生きてる!
早く、病院に連れていかないと!」

「紅夏、落ち着け。
お前だって怪我してるんだから。
止血して指を固定しないと」

私の腕を、ほどいたロープで松岡くんがきつく縛る。
右手の薬指は……ぶらぶら揺れていた。
けれど興奮しているからか、痛みは少しも感じない。