そのたったひとりを引き当ててしまうなんて……私は運がいいのか悪いのか。

「でもおかしいですよね、家政夫なのに執事コスプレしてるなんて!」

桃谷さんはおかしそうに笑っている。
が、普通はそうだろう。

そんなに執事になりたいのなら執事になればいい。
もしくは執事コスがしたいだけならプライベートでやるか、仕事にしたいなら執事カフェで働けばいい。

一度、聞いたのだけど。

「ご存じですか?
現在の執事は燕尾服など着ません」

「え、そうなんですか?」

執事といえばこんな格好をしていると思い込んでいただけに、意外だった。

「こんな目立つ格好の執事がついていれば、そこにセレブがいると宣伝しているも同じです」

「確かに……」