くくくっ、祐護さんは酷く愉しそうだ。

「ねっ。
君もベストセラー作家になりたいよね」

「んんーっ!」

そんなの、なりたくない。
死んで話題になって本を売るなど。
私にはまだまだ書きたい作品がたくさんある。

「ねえ。
――なんで僕の言うこと、理解しないの?」

祐護さんの顔から一切の感情が消えた。
ピタピタと手にしたナイフで私の頬を叩く。

「僕がどれだけ苦労したか知ってる?
君のためにけっこうお金、つぎ込んじゃったし。
なのにやあぁーっと見つけたすてきなターゲットには、邪魔なナイトがついてるし」

すぅーっ、ナイフを頬につけたまま彼が引き、頬に鋭い痛みが走っていく。

「まあさ、ド処女のひきこもりを騙すのなんて簡単だったけど。
どんどん不安にさせてちょっと背中を押してやったら、自分からドツボにはまって。
あとは優しくしてやったらチョロいチョロい」