「それでも、僕のおかげで本はバカ売れ。
初版なんて店頭に並んだ途端売り切れて、重版が短期間に三回もかかったよ。
だから実験してみることにしたんだ」

実験、ってなに?

「SNSをよくやってる作家を中心に、嫌がらせしたんだ。
ほら、炎上商法って奴?
手間は凄くかかったけどね。
大っ嫌いな猫だって捕まえて。
……ああ、でもあれはあれで嫌いな猫を殺せてすかっとしたけど。
それでさ、奴ら、すぐにSNSで嫌がらせされてるとか発信するから、ほんとよく燃えて本も売れたね」

そういえば祐護さんは言っていた、嫌がらせを受けた作家、本がよく売れているって。

「実験は成功したから、次の段階に移ることにした。
それが――君」

どうして私なんだろう。
作家なんてたくさんいる。

「TLから文芸転向ってまあまあ話題になるし。
それにさ、桃谷に紹介されて再会したときは、これは運命だって思ったね。
しかも恋する乙女みたいな顔してるし」