『紅夏の本当の彼氏になりたい』

ちらりと松岡くんの言葉があたまの隅をかすめていく。

でもあれは、全部演技だった。
忘れて、私は祐護さんを好きになる。

「……はい。
私も、祐護さんと同じ指環をつけたい、です」

祐護さんの、眼鏡の奥の目が眩しそうに細められる。
私の右手を取り、彼は薬指に指環を嵌めた。

「本当は左手に嵌めたいんだけどね」

祐護さんの顔がゆっくりと近づいてくる。
私も目を閉じてそのときを待った。

――けれど。

「あ、これはやっぱりあとで。
今晩、紅夏の初めてをもらうときに思いっきり甘く、ね」

意味深に祐護さんがふふっと笑う。

なにを言っているのか理解したあたまは……ぼふっと爆発した。