「紅夏、僕が来ないとごはん食べないし。
お風呂も入らないし。
いままでどうやって生活してたの?」

「うっ」

ええ、だからこそゴミ屋敷寸前になって何度も部屋に閉じ込められ、家政婦さんを頼む羽目になったんですが?

「そ、それは締め切り寸前で追い込まれているからであって……」

蒼海文芸大賞締め切りまで一ヶ月を切った。
昼夜集中して書いているおかげで半ばは過ぎたが、残りはまだまだある。

「桃谷から聞いたよ、紅夏の家事下手。
物が崩れて部屋に閉じ込められて、窓から脱出するときに足を捻挫したとか」

「うっ」

なんで立川さんに喋るんだ。
恨むよ、桃谷さん。

「だから僕が、快適に紅夏が執筆できるようにサポートしたい。
ほんとは一日中ついていたいけど、まだ僕、会社員だし?
でもそれ以外の時間は紅夏のために使いたい」