セバスチャンは祐護――立川さんが帰ってくると同時に姿を消す。
そして出て行くまで絶対に姿を現さない。
例えどんなに、大好きなおやつで釣ったとしても。

「紅夏、ただいま」

「おかえりなさい」

ちゅっ、祐護さんの唇が私の額にふれた。

「すぐにごはんの用意するね」

「お願いします」

「お願いだなんて。
これは僕がやりたくてやってるんだから、紅夏は気にしなくていいんだよー」

ふふっ、小さく笑って祐護さんは仕事部屋を出て行った。
ひとりになって小さく深呼吸。
ごはんまでもうひと踏ん張りしますか!

「べーにか。
ごはんにしよう」

「うわっ!」