愉しそうに立川さんが噛み痕を指でなぞる。
恋愛経験が松岡くんしかない私にはよくわからないが、みんなこんなに噛みつかれているもんなのだろうか。

仕事部屋に戻って鏡を見たら、くっきりと噛み痕が残っていた。

「これ、消えるのにかなり時間がかかるのに……」

でもそれだけ、立川さんは私が好きってことでいいんだろうか。
その気持ちに私はどう、応えたらいいんだろう。
いきなり推しに告白されたって、現実味がまるでなくて……困る。

「まだ恋愛初心者マークもとれてない私に、わかるかー!」

あ、なんか叫んだらちょっとすっきりした。
執筆、再開しよ。



「うわっ」

飛び込んできたセバスチャンが大慌てで机の下へ潜っていく。

「ただいまー」

あ、祐護(ゆうご)さんが帰ってきたんだ。