「……!」

反射的にあらわにされていた首筋を押さえる。
おそるおそる見上げると、レンズの向こうと目があった。
私の目を見たまま、立川さんは口もとだけで僅かに笑った。

「知らないと思ってた?
隠してたつもりだろうけど紅夏に会うとき、首からちらちら噛み痕が見えてたよ」

つま先から沸騰した血液がF15になって急上昇する。
なにか言おうと口を開くものの、音は全く出ない。

「ねぇ。
僕もここに紅夏は僕のものって印、つけたいな」

口角をきれいに上げて立川さんが笑う。
首筋を押さえていた手は彼に絡め取られ、壁に押さえつけられた。
ゆっくりと彼の顔が近づいてきて、視線が彷徨う。

「……いっ」

出そうになった声は、唇を噛みしめて飲み込んだ。
ただ、ただ噛まれた首が、痛い。

「これで紅夏は僕のもの」