「紅夏は優しいんだね」

いつの間にか背中が壁についていた。
するり、立川さんの手が私の頬を撫でる。

「紅夏には彼女を責める資格があるのに、庇ってあげるなんて」

「えっと……。
でも、悪いのは松岡くんで、彼女じゃないので」

どうでもいいですが、私の耳裏のにおいなんて嗅がないで!
臭くないか心配になってきちゃうから!

「でも部下の責任は上司の責任だよ。
だから、彼女が責められても仕方ない」

いいから、耳もとで話さないで!
くすぐったいです!

「なのに庇ってあげるなんて、やっぱり紅夏は僕が思った通り、優しいな……」

どうでもいいですが、なんで首筋を撫でているんですか!?  もう、嫌な予感しかしないんですが。

「ねぇ。
僕もここに、印つけていい?
彼にはつけさせてたよね」