荷物を持とうとしたら立川さんに取られた。
そのまま私についてくる。
玄関の戸の向こうはひとりしか人影がなくて安心して開けた。

「このたびは松岡が大変ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした!」

私は電話でなにも言っていないのに、林さんは中に入るなり 凄い勢いであたまを下げた。

「ほんとに迷惑してるんですよ」

はぁっ、これ見よがしに立川さんはため息をついた。

「そちらの松岡さんが紅夏になにをしたのかわかっていますか」

「松岡からは葛西様の気分を害することをしてしまった、としか……」

林さんを見る、立川さんの視線が冷たい。

「家政夫の領域を越えて恋人関係を強要し。
あまつさえ、ストーカーのようなことまで」

いや、頼んだのは私なんですが……。
ガンガン押してきたのは松岡くんだけど。

「す、すみません!」