好きだって、私が可愛いって何度も何度も額や頬にキスしてくれた。
帰るときはいつも、もっと一緒にいたい、帰りたくないって顔をしていた。

あれは全部、嘘。
全部、演技。

「紅夏……」

こぼれ落ちそうになる涙を拭い、笑って誤魔化す。

「大丈夫、です。
だからあれ、全部松岡くんが私のために作り置きしてくれていたおかずなんです。
けど、もう……」

食べられない。

食べたくないんじゃなくて、食べられない。
だってきっと食べたら、楽しかったことばかり思い出してつらくなってしまうから。

「そうだよね、あんな奴が作ったものなんて、もしかしたら毒でも混ぜてあるかもしれないもんね」

「そう、ですね」